【医学部志望者注目】日本と海外の医学部・医学教育の実態

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「貴方はなぜ日本で医療を学びたいのでしょうか?」「日本でなければいけない理由は?」これらの質問に対して明確に回答できる医学部志望者は少ないと思います。ほとんどの日本の医学部志望者は入学試験のことで頭がいっぱいで日本の医療や医学教育、海外の医療や医学教育に関しての情報を知る余裕がないのではないかと考え、今回は、日本の医療の長所と短所、医療教育とその歴史、最後に欧米各国の医療教育について説明いたします。

🇯🇵日本の医療

Healthcare_of_Japan

長所

日本の医学研究は世界でもトップクラスです。過去20年間で言うと、日本では4人がノーベル生理学・医学賞を取っており、その中には、有名なIPS細胞を世界で初めて作製した山中伸弥教授も含まれています。ノーベル生理学・医学賞の受賞人数では世界第3位ですが、世界第一位のアメリカ、第二位のイギリスと比べると大きな開きがあります。比較のため過去20年間の国別ノーベル生理学・医学賞受賞人数を下表にまとめました。

2000年〜2021年の国別ノーベル受賞者数

順位受賞者数
1位 アメリカ合衆国27
2イギリス10
3日本4
4フランス3
5オーストラリア3
6ノルウェー2
7ドイツ1
8スウェーデン1
9アイルランド1
10カナダ1
11南アフリカ1
12中国1
総計55
※国籍がアメリカと二重にある方が数名おりますが、それらの方々は、この表ではアメリカではない方にしています。
(理由は、アメリカの受賞数が非常に多く、減ったとしてもその順位に影響が出ないから)

表のソース:https://en.wikipedia.org/wiki/List_of_Nobel_laureates_in_Physiology_or_Medicine

医療サービスでは、保険証提示するだけで誰でも掛かった費用の7割を国が負担し安価に医療サービスを受けられる日本の医療保険システムが評価されています。また各国の医療システムをWHOが評価した2021年度の医療ランキング(Best Healthcare in the world Ranking)では日本は10位と優秀です。さらに最も評価の高い世界5大医学雑誌の一つTHE LANCETが発表した世界195カ国の医療ランキング(Measuring performance on the Healthcare Access and Quality Index for 195 countries)では日本は12位です。

ソース(WHO医療ランキング):https://www.who.int/healthinfo/paper30.pdf

ソース(THE LANCET):https://www.thelancet.com/action/showPdf?pii=S0140-6736%2818%2930994-2

短所

短所も見てみましょう。日本の医療は独自の進化をしてきており「ガラパゴス化」しているとも言われてます。

何年も前から問題になっていた「医師不足」が新型コロナウイルスが出てきてから鮮明になり、病床数は多いが「医療ひっ迫」と言ったシステムの問題があります。

また、医療方法の問題の1つとして日本では中絶手法がいまだに搔爬法(そうは)という方法で行われることが少なくありません。日本の医師は熟練が十分であるためリスクが少ないと謳っている病院もありますが、やはり子宮内を引っ掻き出すので女性にとってはリスクがあります。WHOも「頸管拡張及び子宮内膜掻爬術(D&C)は、時代遅れの外科的中絶方法であり、 かつ真空吸引法及び/または薬剤による中絶方法に切り替えるべきです 。」(引用:WHOの安全な中絶日本語版49ページ)と謳っています。しかしながら日本は、未だに搔爬という方法を取っています。上記のとおり、WHOは代わりに手術を伴わないリスクが低いピル(経口中絶薬)と吸引法を推奨しており、搔爬法については他に方法がない場合にのみ搔爬法にすべきと勧告していますが、日本では該当のピル(経口中絶薬)すら未だ認可されていません。

(余談ですが、2021年12月にイギリスの製薬会社が日本の厚生労働省に経口中絶薬の承認申請を行いました。よって今後日本でも承認される可能性もありますが、日本産婦人科医会は、承認された場合このピルの値段(海外では約740円)を10万円の料金設定にするという考えを示しています。日本産婦人科医会は、これまでもアフターピルを薬局で販売することに関しても反対を表明していましたが、日本の医療業界は体制が古く新しく変わっていくことが非常に苦手なのだと感じます、利権などに捉われず、世界の流れに合わせ人々のために選択肢を増やし行ってほしいと思います。)

また、分娩方法も欧米では、無痛分娩が普通ですが、日本では無痛分娩を行える病院が欧米ほど多くはなく、また親世代が無痛分娩を認知しておらず「子供は自然に痛みを伴って産むべき」という古い考えのもと息子や娘に強要するということもあるというのが現状です。こういった現状を目の当たりにしていると本当にトップクラスの医療を持つ国なのか疑問です。

ソース(WHOの安全な中絶):https://apps.who.int/iris/bitstream/handle/10665/70914/9789241548434_jpn.pdf?sequence=10

日本の医療教育とその歴史について

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ドイツ医療から日本は学んだ

現在の日本の医学教育は、1870年代のドイツ帝国時代のドイツ医療が基礎になっていることをご存知でしょうか。日本の医学用語はドイツ語も少なくはないことも、このことが理由です。医局講座制もドイツを手本にして日本に定着した制度です。そして現在の日本での医学の教育方法にも大きく影響しています。

少し歴史の話をします。約200年の鎖国時代から覚めた日本では、新しい知識を世界から学び日本の国を繁栄させること(五箇条の御誓文の第5条)が当時急務でした。医療面についても世界から知識を得ようとしており、どの国の医療の基礎にするかは色々な意見がありましたが最終的にはオランダ医療推進派とイギリス医療推進派の2大派閥に分かれていましたが。(様々な諸説や、その他の理由はありますが)これら両派閥に角が立たないようにするためという政治的な理由から、オランダ医療・イギリス医療に次いで有力であったドイツ医療にすることとなりました。かの福沢諭吉は、ドイツ医療導入について反対であり、明治6年から明治13年まではイギリス医学を範とする慶應義塾医学所を運営していた事実を見てもその思想が読み取れます。

日本に導入当時のドイツ医療は学問中心でしたが、その後1960年代からドイツは医療改革を重ね現在は学問中心ではなく「臨床」に重きを置いています。医局講座制も廃止し臨床教授制を導入しています。また当時のアメリカも既に臨床中心でした。現在の先進国の医学教育(4年制も6年制も)も臨床実習に2〜3年間費やしていることから世界のスタンダードは臨床中心です。

第二次世界大戦後に日本は連合軍に医師教育を改善されインターンや医師国家試験が導入され日本もアメリカ医学へと方針転換されたにも関わらず現在でも日本の医学教育は「医学研究」に偏っており、座学中心の知識詰め込み型です。2004年になってからは、大学卒業後2年間は臨床研修が義務化されたが、それでも世界から約40年遅れを取っていると言わざるを得ません。前回のブログと少し重複しますが、2010年のアメリカのECFMG(非営利の教育委員会)の通達から日本もグローバルスタンダードの医学教育を目指しましたので座学中心の医学教育スタイルも徐々に変わりつつありますが、それでもまだJACME(日本医学教育評価機構)からグローバルスタンダード教育の認可を受けられていない大学も少なくないというのが状況です。(JACMEから認可受けている日本の大学のリストはこちら

五か条の御誓文 (太政官日誌. 慶応4年)

参考ソース:http://www.keiomedsoc.org/magazine/pdf/keioigaku84-2.pdf

欧米の医学教育

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では、日本以外で欧米諸国の医学教育はどうなっているのかを下記で説明します。

🇺🇸アメリカ

高校卒業後から医者になるまでの過程

アメリカの場合は、基本的には、4年制の大学に入学・卒業し学士号取得後に4年生の医科大学(Medical School)に進みます。高校卒業後、医科大学を卒業するまでには日本は6年ですが、アメリカは7年-8年かかります。

Medical school在学中・卒業後に医師免許試験(USMILE)を受けます。この試験に合格すると各州の医事委員会 (State Medical Board)より医師免許が交付されます。この時点で許可された医療活動は、基本的な処置や診療のみに限定されます。卒業後・免許取得後、1年の研修先の病院で臨床研修つまりインターンを行うことが義務付けられています。日本では医学部卒業後に2年の研修が2004年から義務化されています。

インターンシップを1年経験後、3年〜6年のレジデンシー(Residency)という後期研修過程に進む専門性を学ぶ、そしてBoard Certification Examinationという試験を合格すると、一般的な医者(Physician)になることができる。その後、更に専門性を高めたい人は、フェローシップ(Fellowship)という過程で研究を続けることができる。

医科大学入学審査について

日本の医学部の入学は、非常に難易度が高いですが、アメリカの医科大学の入学も同様に難易度が高いです。Medical Schoolの入学審査も日本より複雑です。学校ごと各々違いはありますが、多くは、GPA(成績)MCAT(Medical College Admission Test :医科大学入学試験)エッセー面接臨床業務の経験ボランティア経験、これまでに行った研究リーダーシップなどがあります。

また、Medical Schoolに入学前の大学では、化学、生物学、物理学等を完了している必要があります。Medical Schoolのカリキュラムは、最初の2年は基礎科学の座学、残りの2年は臨床現場での患者のケアになります。日本の大学医学部卒業時点では、医師としての実地経験はないに等しく、日本の医学部卒業後1年目が欧米の医学部3年もしくは4年に相当すると言えます。

🇪🇺欧州

🇫🇷フランス

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入学審査について

入学審査は基本的にありません。日本と違い入学試験がないので高校卒業(バカロレア取得)であれば、どんな生徒でも医学部に入ることができます。しかし、後述するヌメルス・クラウサス(定員制限)の試験により医学部を断念する人が多いようです。医学部は全て国立であり、私立はありません。また、英語で医学を教えている学校もフランスには現時点(2022年)ではありません。

教育課程について

医学部は卒業に9年〜12年掛かり下記3つのサイクルで構成されています。2年目までは座学が多いが、3年目以降は臨床中心となる。日本で卒業後インターンがあるが、フランスでは卒業する前にインターンが始まります。

① 1st サイクル:
最初のサイクルはPCEMと呼ばれ医学に必要な基礎知識を2年間学ぶ。
初年度の終わりにはヌメルス・クラウサス(定員制限)の試験が行われます。これに合格すると医学部を継続することができますが、この試験は2回までしか受けることができません。

②2nd サイクル:
2つ目のサイクルはDCEMと呼ばれ、4年間あり、この間に課せられた全ての必修科目を修了し病院の研修も行います。
このサイクル中の研修はインターン(Intern)ではなくエクスターン(Externe)と呼ばれ、インターン生や一般医師の責任の元で助手として医療活動を行う。エクスターンでは、学生にも多くないが報酬が発生する。報酬は、年次によって上がっていく。
4年目の終わりには、テストがあります。このテストに合格すれば3つ目のサイクルに進むことができます。また、このテストのスコアによって自分の専門科が決まります。専門科ごとに各々の定員数があり、スコア上位保持者から好きな専門科を選択することができます。各々の専門科の定員が埋まってしまうと、あとは一般医・総合医となります。

③3rd サイクル:
最後は、DESと呼ばれ、このサイクルでは総合医療と専門医療が学べます。総合医療が3年で専門医療 は4年〜5年掛かります。どちらかを修了すると卒業証書が与えられます。更にその他の専門医療の研究を進めたい場合は追加で2年間与えられ、修了するとDESCという称号(証明書)を得ることができます。

🇮🇹イタリア

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入学審査について

イタリアの医学部・医科大学に入学するには、教育大学研究省という国の教育機関が毎年作成する共通入学試験(IMAT)を受ける必要があります。試験内容は、倫理的思考力を問う問題、一般教養、数学・物理、化学、生物学で全部で60問のテストになります。国立の入学テストの日程は全て同日になります。私立の医科大学の入学テストの日程は、国立とは被らないようになっています。

イタリアの医科大学は、イタリア人以外の人にも門戸を開けているので英語で教育も受けられる学校もあります。また、国立の医科大学の費用に関しては、州が助成金を出しているためイタリア人だけではなくイタリア人以外にとっても非常に安価になっています。しかし、これらの国立の医科大学に入学するには、IMATで非常に高いスコアを取らなければなりません。

私立の医科大学にも、英語で教育している大学もあります。費用は国立大学に比べると高いですが日本の私立の医科大学ほどではありません。イタリアの医科大学も、フランスと同じで、入学にはヌメルス・クラウサス(定員制限)があり、基本的には試験の上位の順に合否が決まります。

教育課程について

イタリアの医学教育は入学から基本的に6年で卒業できます。最初の3年間は座学中心で基礎知識(物理学、化学、生物学、生化学、遺伝学、解剖学、生理学、免疫学、病態生理学、微生物学)を学び、残りの3年間は臨床を中心に学びます。また、ほとんどの大学では、6年間の間に36個の試験があり、最後の年には自身の卒業論文(学術的文献や研究)について教授会で討論しなければなりません。討論会を行った後に修了式にて医学博士(アメリカでいうDoctor of Medicine: M.D.)の称号が与えられる。

卒業後、新米医師は3ヶ月間の無給の研修(tirocinio post-laurea)を受けなければなりません。この研修は、大学病院での2ヶ月間(内科と外科で1ヶ月ずつ)と、開業医の助手としての1ヶ月間で構成されています。各月を無事に終えたことを指導医から報告された後、新米医師は医師免許を取得するために国家試験(esame di stato)を受けます。その後、イタリアの各州にある医師会(Ordine dei Medici)の支部に登録します。

🇨🇿チェコ共和国

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チェコ共和国での医学研究は14世紀にまで遡り、最初の医学部は1348年にプラハのチャールズ大学(プラハ大学とも呼ばれる)の第一医学部で始まりました。この医学部・医科大学は世界で11番目に古く、非常に権威があります。数々の業績を残した生理学者のヤン・エヴァンゲリスタ・プルキニェもプラハのチャールズ大学の第一医学部で医学を学び、後半生はこの母校で研究を続けていました。

日本ではあまり知られていませんが、その他にも世界的に有名な医学部・医科大学が多いチェコ共和国は、教育水準が高く英語でも授業を行なっているため非常に人気が高く、世界各国の学生が医学を学ぼうとたくさん留学しています。アメリカ、イギリス、カナダ、イスラエル、スウェーデン、中東、マレーシアからの生徒がマジョリティを占めています。ほとんどのチェコ内の医学部・医科大学では英語でも教育を行なっており、医学部は基本的に6年で卒業できます。

入学審査について

チェコの医学部・医科大学に入学するには入学試験を受ける必要もありますが、その他に高校卒業時の生物学、化学、物理学の成績、および英語による面接動機英語力の確認)に基づいています。入学試験は各大学によって異なりますが、ほとんどは、生物学、化学、物理学の選択式の試験になります。申請するには高校を卒業している必要があります。先ほども触れてますが、チェコは人気が高いため競争が激しいです。

教育課程について

チェコ共和国内の医学部・医科大学は、基本的に6年で卒業できます。チェコもイタリアと似ていて最初の3年間は座学で基礎知識を学び、残りの3年間は臨床中心に勉強します。卒業すると、医学博士(medicinae universae doctor:MUDr.)の称号が与えられます。 

🇧🇬ブルガリア

ブルガリアの医科大学の全てのコースの資格は、EU全体で認められています。また、ブルガリアは物価がまだそこまで高くないので生活費も授業料も欧米の中では比較的抑えることができます。ブルガリアの医学部・医科大学も英語で授業を行なっている学校もあり他のヨーロッパの国々からの留学生も少なくありません。

入学審査について

ブルガリアの医学部・医科大学に行くには、高校を卒業している必要があり、それぞれの学校独自の入学試(主に、科学と生物学のみ)を受ける必要があります。入学試験のスコアと高校時の科学と生物学の成績が入学の判断材料になります。

教育課程について

ブルガリアの医学部・医科大学は6年で卒業できます。最初の2年間は主に基礎知識を学び、3年生〜5年生は主に臨床研修中心になり、6年生はインターンシップになり病院の下で働くことになります。6年目の最後には、州の医師免許試験があり、合格すると卒業し医師の学位が授与されます。

最後に

海外の医学部も視野に入れてみませんか?

日本はかつてドイツ、アメリカから医療を学んだことから分かるように欧米の医療は進んでいます。医療現場の最新機械も欧米製品が非常に多いです。

我々Medical Abroadは、主に欧州の大学を紹介しています。我々が紹介している海外の医学部の費用は、日本の国公立の医学部の費用ほどではないですが、生活コストも含めた場合、同じくらいになります。

あなたのゴールが医師免許取得の場合、費用も安く、実践的な英語も学べ、選択肢も広がる医学部留学は非常に賢い方法です。また、日本では海外の学会で発表経験のある医者が少ないとも言われていますので、日本に戻って変重宝されることは間違いありません。

海外留学をしながら医学を学んでみませんか?相談や質問等ございましたらこちらからご連絡ください。

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